忍者の話をしたいわけじゃありません。
シミの話です。
忍者は大好きですけどね。
白いコットンセーターについた油じみです。
業界用語で忍者ジミというのがあるんですが、これは付いたときは見えなくてあとから出てくるシミのこと。
このように最初から見えていれば楽勝・・・のはずですが・・・
黒いシミですから、一見、車に乗ったときにでもついた油じみに見えます。
ちょこっと付いたように見えますから、簡単そうですよね。
家庭でも落とせそうなシミです。
もちろんクリーニング店ならドライクリーニングでさらに簡単に落とせそうに思えますが、私の勘が働きました。
(なんかおかしい。洗っただけじゃ落ちないような気がする・・・)
このセーターはダブルクリーニングでお受けしましたので、ドライとウェットの二度洗いをします。
油汚れはドライでなるべく取り切りたいところです。
しかし、ドライも万能ではありません。
きつい油がついている場合はドライで洗っても取れないことが多いのです。
ドライクリーニングは衣類の風合いをくずさずに油汚れを落とすために考え出されたクリーニング方法です。
油汚れにはバツグンの洗浄力があります。
しかしいくら油汚れに強い、といってもあまり強すぎても風合いがぱさぱさしちゃうんですね。
パークと呼ばれる溶剤を使っているところはその傾向が強いです。
セーターなんか油汚れを取りすぎてぱさぱさした風合いになって着心地が悪くなった、という話をよく聞きます。
また環境面でも問題があるので規制が厳しく、使うところが少なくなってきました。
ですから、それより油汚れを落とす力が弱いが風合いが変わらない石油系を使うところが多くなっています。
当店でも石油系を使っています。
なので、パークほど洗浄力は強くありません。
石油系の洗浄力ではこのシミは取れないだろう、と思ったのです。
そこで先にしみ抜きをします。前処理しみ抜きですね。
よくクリーニング店にいくと前処理という言葉を聞くと思いますが、大事な行程です。
汚れやシミによっては事前に処理しないとかえって取れにくくなるものがたくさんあるのです。
たとえば血とかワインとか。
この油シミもそのひとつです。
ドライで洗って取れそうになければ、どのみちあとでしみ抜きすることになります。
ならば、先にシミ抜きしたほうがなにかと具合がいい。
やはり勘が働いたとおり、一筋縄では取れないシミでした。
油を落とすだけで4,5回はシミヌキを繰り返しましたが、まだ茶色く残っている。
これ、金属のシミです。
新品の油じゃないかぎり機械油などにはかならず含まれています。
油って機械の摩耗や潤滑のために使われますから、とうぜん金属もその中には入ってくるわけです。
これは家庭では落とせません。
強力なドライクリーニングのパーク系で洗ってもこれは残ります。
それを取り切って、やっとシミはなくなりました。
やはり、先にシミ抜きしておいてよかった事例でした。